現役の理系研究者::ぼくはPhD.KKK

フェローシップ(助成金)獲得で、国内のブラック研究室から解き放たれた生粋のアル中研究者。生命科学専攻。ゆるーくポップに分かりやすく、をモットーに「医科・生物学の話題」と「摩訶不思議な研究職ライフ」を発信します!英語力0からの留学経験に基づく「初心者向け」英語学習テクもあるよー٩( ᐛ )و

【ライフ】失敗しない研究室選び:厳選テクニック5選

研究室ガチャ。それは★1でもリセットマラソンを許さない究極のクソ仕様である――とか、僕は思ってるんですけど。。やっぱり体験配属とかないと内情を予測するのは難しいですよね?でもリセマラ出来ないから選択で後悔したくないし。。

この記事では、研究室(ゼミ)所属のプロジェクト研究員である僕が、その経歴で見つけた「失敗しない研究室選びテク厳選5つ」をご紹介します。カオスな研究室内情を網羅している僕が、内部情報を大暴露していくぜッ!

 

*テクニック②の下に「就職 」についての大暴露:最重要注意点あり

 

①あなたの指導教員は、教授じゃない

 

まずは知ろう、研究室ってどんな所?

特に、研究室所属前の大学3年生以下の皆さんは、研究室(ゼミ)と言っても、イマイチしっくり来ないですよね?僕もそうでした。。なのでここでは、アカデミック研究者の立場から、恥ずかしい実情を暴露していきたいと思います!

 

まずはざっくりと研究室の成り立ちを。これを知っていると見えてくるものがあるはずです。研究室は、研究室主宰者(PI: だいたいは教授)が運営する小さな組織のことです。この下に、研究員やテクニシャン、助教や講師など他の教員が配置されているわけです。そして、外から新規配属される学生さん達はこの一番下に。。

そうです、会社と似てるんです。ピラミッド構造なんです。重要なことなので簡単に図式します。

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PI(教授?) ⇒ 社長
* PIは研究室内で一番階級が上の人です。准教授や講師、助教の場合もあります。

他職員(准教授/講師/助教) ⇒ 部長研究員

研究員(ポスドク) ⇒ ?
博士過程学生 ⇒ ?

*博士学生や研究員の立ち位置はラボによります。独立した一人の部長から、部長の主戦力、学生指導係まで

 

学生諸君 ⇒ 新卒採用の会社員

 

分かります?

PI (だいたい教授)は、研究室の運営者です(以下、ラボ運営者をPIと記載します)。なので、研究室の指針や管理・運営、最終決定をするのがお仕事なのです。殆ど場合、学生さんの教育指導をする人は、PIではないでしょう。

この構造的に、あなたの研究室生活が楽しい快適か、暗い憂鬱なものかを決定するのは、研究のプロジェクトリーダー、部長クラス、つまり他職員でしょう。部長クラスの職員の数だけ、研究室には異なったプロジェクトがあります。かの有名会社Appleでも、スマートフォン部署と、パソコン部署は別であるでしょう。そういう感じです。

 

つまり、最初にあなたがなすべきことは、研究室の顔、であるPIを見るだけでなく、実際の部署、各研究プロジェクトのリーダーがどういう人柄で、何をやっているのか把握することです。研究者は変わり者が多いですし、まれにPIが他職員を御しきれておらず、部長が暴走してる場合があります。Appleに、リンゴ農家がいるような感じです。気を付けましょう。

 

厳選テクニック①「指導教員:プロジェクトリーダーの人柄、プロジェクトを調べる」

 

②研究室の最大存続年数

 

この研究室の構成を知っていると、もう一つ重要なテクニックに気付くことができます。それは、研究室の運営者は、常にPI、ラボ内で最も職位の高い人間であるという事実です。

あなたの行きたいラボ...
PIの年齢はいくつですか?
退職まで何年ありますか?

もしあなたが大学院進学を少しでも考えているのであれば、次第に無視できなくなることです。大学院前期(修士課程)まで目指しているのであれば、大学4年次から3年。大学員後期(博士過程)まで目指しているのであれば、6年ほど――と、そうとだけ考えているのではかなり危険です!

もしも博士課程まで進学する場合、卒業後も、「博士課程の指導PIから推薦書」が度々必要になります。在籍中や卒業後のPIの退職はかなりの痛手であるので、将来苦労することでしょう。つまり、PIの退職というのは、もし途中で「やっぱり進学しようかな」と思うことさえ許しません。

 

絶対に、大学院後期(博士課程)進学しないという決意がないのであれば、PIの年齢を気にしておきましょう。

 

なお、PIが退職した後は、基本的には公募募集となるでしょう。PIの仕事仲間であった、他職員が、そのPIの後釜に座れれば良いですが、そうであった場合、研究室内のパワーバランスが崩れて大きく体制が変わることになるでしょう。もしもPIの後釜に、外から募集してきた人材が座ると更に悲惨です。研究室はPIによって運営されるからです。研究プロジェクトは総入れ替えになる可能性もあります。スティーブ・ジョブズ死後のAppleのCEOに、パティシエが座れば、スマートフォン部署、パソコン部署は近いうちに解体されるでしょう。。そういう感じです。

 

厳選テクニック②「PIの退職年齢を確認する」

 

 

 ** 注意点:就職先 **

 

進路の話が出たので、「研究室の就職先」について補足しておきます。学部、修士課程終了と同時に、社会に出ることを第一に考えている人がおそらく大多数でしょう。そういう人ほど、研究室卒業後の就職先って気になりますよね? 僕は、その研究室で何年も働いていた(いる)研究員です。だから信じてくださいね?

 

研究室の就職先。
あれ、何にも意味ないんです。

 

ぼくその情報書いて、
学生を釣ってた方の人間ですから。。

 

ごめんなさい。あれは本当に嫌な気分だった。断れない上下社会。こっそり研究室訪問に来た学生達に真実を教えておくのも、いつバレるかヒヤヒヤしてました。

あれって、研究室の歴史の中で、出た就職先のいいやつだけをピックアップしてます。十数年のラボ歴史、何百人の学生から数個、いいヤツだけです。それに大学4年生で就職する人は、研究室に入る前から就活してますよね?時代や業種によっては研究室入る時には内定持ってますよね?はい、そうです... 研究室配属前の内定先さえ入れてるんです。

 

それから、追い打ちをかけるようですが、残酷な現実として、日本は完全PI主義です。あなたがどんなにいい研究をしても、どんなにいい賞をとっても、もし学部・修士在籍中に論文を出しても、就職活動のときには「いいPI、いい指導教員のラボだったんだなあ」としか思われません。あなたに泊は付きません。もしも企業の研究内容と、ラボの研究内容が合致していてもあまり意味はありません。学部・修士雇用の研究職は、一から基礎育指導するために雇用されるので、専攻分野はあってないようなもの、能力で判断されます

なので基本原則として「就職のために、研究室を選ぶことは出来ません」。逆に、研究室が最悪でも、あなた自身の就職先が悪くなることもありません(心だけは強く持ってね!)研究室選択が将来の雇用に影響するのは、博士課程まで進学する人だけです。その人達に限っては、研究室選びで、就職先が変わる可能性が出てきます。アカデミックに進むにしろ、企業に進むにしろ。

 

厳選テクニックα「どんな研究室選びをしても、就職に影響はない」

 

*就職先と研究室は分けて考えましょう。意味がないなら、楽できそう、面白そう、成長できそう――のどれかがいいよね?

 

③研究室のタイプを把握しよう

 

研究室には大きく2種類あります。
まずはそこを理解しておきましょう。

 

・研究重視(ウェット)
 論文を書いて、業績を重ねて、その功績を元に次の研究資金を調達して、そうやってステップアップしていくことに指針を置いている研究室

・教育重視
 研究活動は基本支給される分でやりくりして、教育の一貫として研究する、ということ指針を置いている研究室

 

ここを読み間違えると、大抵、不幸な結末になるでしょう。研究室の運営方針と、あなたが研究室に求めるものに乖離があるからです。実はこの2つ、海外ではキチンと雇用分けされています「研究用大学教員」と「教育用大学教員」です。日本ではごちゃまぜですが。。

ここの判断をするときは、研究室の業績を調べてみて下さい。論文一覧です。そこで、最重要なのがPIの名前が、論文毎の著者欄の一番最後にあるかどうか、です。もう一回言います、最重要です。論文として公表されるとき、研究プロジェクトを執り行った研究室の管理者が一番最後に書かれます。つまり、研究室の業績に連ねてあっても、PIの名前が最後にない場合は、その論文業績での、その研究室の立場は「外部協力者の一人」です。場合によっては、材料提供しただけです。上記の「研究重視」なら、PIの名前が最後にある論文が多くあり、「教育重視」ならそれはあまりない、または頻度が極端に低いはずです。

 

厳選テクニック③「PI名が最後に記載された論文を確認する」

 

えーー?「研究重視」と「教育重視」の中間がいい?これは先に言っておくと、かなりの運頼りとなるでしょう。でもテクニックがないわけではないので一応紹介しておきましょうか。

 

【一つ目のパターン】

PIが社長で、その下に部長がいる、という話を覚えていますか。「研究重視」と「教育重視」この中間に位置できる研究室というのは大抵、いくつかの部署が「研究重視」で研究資金を稼ぎ、他の部署が「教育重視」でのんびり研究をしています断言します、その研究室はドロドロです。そしてあなたもドロドロな人間になって自己嫌悪することになるでしょう。

 

【二つ目のパターン】

これは「教育を重視する余裕がある」研究重視のラボです。これは部長のタイプに完全に依存していますが、かなり希少であることは間違いないでしょう。新配属の学生は、最短1年、修士で3年、博士で6年でラボを去ってしまいます。現実的な話として、この短いサイクルで新人教育を繰り返すというのは運営上、非常に難しいでしょう。投資コストの回収が難しすぎます。これが可能である運営プランは、3つしかありません。

 

A. 学生数が、スタッフに比べて少ない

B. 修士・博士低学年が多い

C. 教育能力が物凄く高い

 

ただ結局、この学生数、大学院生数、教育能力、これらは同じ研究室内でも、部署毎に変わってきます。なので全体として大丈夫そうな運営プラン(上記の状況)であったとしても、部署毎の状況が把握できないので、かなり運要素が高いでしょう。

 

ただ逆説的な判断は容易です。

 

逆A. 学生数が、凄く多い
 ⇒ 教育不可

逆B. 博士高学年や研究員が多い
 ⇒ 優秀な人材以外は教育できない

逆C. 教育能力が低い
 ⇒ 論外だが、外から判定不可

 

少なくとも一番上のラボは、止めておきましょう学生数がスタッフ人数よりも極端に多すぎると「研究」か「教育」の体制は維持できませんこのラボでよく起こることは学生の放置です二番目のラボは完全実力主義でしょう博士高学年や研究員は、直接自分の手で研究を進めることが仕事である場合が多いので、教育の時間は割いてはくれないでしょう。あっても余力は少ないです。最後に、あなたの志望する部署の部長の教育能力が低いかどうか、は見極めるのは難しいでしょう。三番目についてはその部署に所属する学生の話を聞けるのが一番です。

 

結論として、中間の「教育」と「研究」の両立できるラボを確実に選ぶことは不可能です。どっちかしか取れない時に、どっちを取るか、それを最初に心に決めておくことをオススメします。

 

④ 研究室のレベルを把握しよう

 

研究室のレベルは、あなたが研究に求めるレベル。自分研鑽欲と野心などが複雑に入り組んだ重要要素でしょう。その逆も然りです。Google検索すると、この点については「獲得研究費を見よう!」と言っている記事がぱっと多そうでした。

それは、難易度高くない(^^;;??

たぶん素人が研究費を調べて判断するのは難しいというのがぼくの考えです。だからもっと簡単で正確な方法をここではご紹介します。

 

実は、研究者のレベル計算式があるんです。研究者の立場からしたらたまったもんじゃないですが。ぼくらポケモンじゃないんだぞ!

 

H-index といいます。まあ計算式はいいんです、検索したら一発で出ますから。以下の「Research Gate」というサイトを使います。これは研究者専用のSNSみたいなもんです。だいたいの研究者が登録してますし、この情報発信時代に登録してない研究者は、それはそれでヤバい認定でもおよそ大丈夫でしょう。

www.researchgate.net

で、トップページの検索バーに英名で名前を入れましょう。詳細な検索方法は別記事で解説してあります!
(後日、別記事作製後にここにリンク貼る!)

 

で、このH-index、分野によって数値にバラつきがあるので、興味がある研究室のPIで比較してみて下さい。一応、僕が所属するような、生物系の基礎研究分野だと、ざっくりこんな感f:id:PhD-KKK:20210217004301p:plain

高い H-index を持っているということは、研究者としてレベルが高い=研究費も潤沢である、または潤沢になる可能性が高いです。これで、どのくらいのレベルで戦えている研究室なのか、おおよその戦闘力を推移することができます。

え?ぼく?ぼくはH -index 4ですよ。まあまだ30ちゃいですから!(必死の強がり!)

でも、ぼくの海外留学先は、ガチモンの化物研究室、同分野で世界10本指に入るんです。だから、PIは H-index 80 超え。まだ55歳以下なのに。。あいつは怪物です。ただまあビッグラボが良いとは限らない、とだけ補足しておきましょう(意味深)。ただハイレベルなのは間違いないので経験値的には美味しいです。もぐもぐ。。

 

厳選テクニック④「PIの H-index から研究室レベルを測定しよう」

 

⑤自分のやりたいことをしよう、、、なんて言わないww

 

 テクニック②の後に少し、補足しましたが、学生が考えているほど「研究室のレベル、研究内容、就職先」はあなたの未来の選択肢に影響しません。たぶん、研究を頑張って、表彰されて、論文を書いても「あ、良いラボだったのね」で終わりでしょう(博士進学者は別ですが)

じゃあ、もう好き勝手しません?「楽したい」でも「面白そう」でも「成長したい」でも... 自分のやりたいこと選んだって良いじゃなのでしょうか。それが一番

 

でもぼくはそうは言いません。

 

ぼくが研究留学先に悩んでいたときに「皆、やりたいこと、興味があること」で選べばいいと教えてくれました。ぼくは愕然としました。そんなもんねぇし――なんて口が裂けても言えませんよ。じゃあぼくはどうやって選んだのか、その方法が、ぼくのオススメする最後のテクニックです。究極にシンプルです。

 

誰だって、嫌なことはやりたくないですよね?

 

人間ってネガティブ。
ぼくは典型的な根暗陰キャ
嫌なことの方がいっぱいあった。

 

給料が安いのは嫌。海外留学するならメシマズは無理。強制はいくない、自由にさせて、責任取るから。酒が欲しいなあ。。これが主でした。

次に浮かぶちょっと真面目な考え。研究はマウス使いたくない、あいつら鬱陶しい。癌の研究はヤダ、家系的にどうせ癌で死ぬからなんか必死になっちゃいそう。iPS細胞は興味ない、でも再生医療が肝臓と皮膚では最終奥義になりそうだから、この2つの臓器の病気はiPSに任せよう。ああ、脳は再生できなそうだな――それは有りかも。でも脳じゃなくてもいいお。

 

ここまで考えて、結局、留学先の研究室は、なんかノリで決めました。でも、ぼくは考えうる限りの嫌な部分は全て排除しました。あとは雰囲気ですよ。ノリですよ。嫌じゃないところの該当件数はいっぱいです。ご縁があったら、もう神様の思し召し!やりたくなくないからOK。そんな感じ。

 

厳選テクニック⑤「嫌なこと・興味ないところはなんとなく抜いちゃう」

 

まとめ

 

いかがだってでしょう?

 

まとめると、

① プロジェクトリーダーを調べる
② PIの年齢から退職年齢を確認する
 X: 研究室の就職先、あれは幻
③ 研究室タイプは「研究 or 教育」の2択
④ PIの H-index で研究室レベルを測定
⑤ 嫌, 興味ない, つまらなそうの感性

 

研究室選びのノウハウってあんまり出てない。少なくとも、学生勧誘する立場の研究員がここまでぶっちゃけるのは中々ないのではないでしょうか。研究者ってもっと情報発信するべき、時代錯誤だよ。。そんなぼくのモットーがあなたの未来に一役買ったのなら、嬉しい限りです。

 

ではではー。