現役の理系研究者::ぼくはPhD.KKK

フェローシップ(助成金)獲得で、国内のブラック研究室から解き放たれた生粋のアル中研究者。生命科学専攻。ゆるーくポップに分かりやすく、をモットーに「医科・生物学の話題」と「摩訶不思議な研究職ライフ」を発信します!英語力0からの留学経験に基づく「初心者向け」英語学習テクもあるよー٩( ᐛ )و

【簡単!サイエンス】アルツハイマー型認知症: いつ/誰が/なぜ.. 知らずにいて後悔しませんか? [後編]

誰しもが「健康長生きすること」を願っています。

その願いが半分叶って、2021年現在、日本は「人生100年時代」。高度医療国の日本では「2人に1人の割合で、87歳まで生きられる」ようになりました。しかしながら、夢の長寿社会に待ち受けているのは75 歳以上の20%が認知症になるという現実です。

 

100人いたら
内、50人が87歳まで生き
内、最低10人が既に認知症です

 

認知症の発症頻度は、現在も増加中。
理由は不明。治療法はない。
 
本記事を読んでも、その現実はすぐには変わらないでしょう。何が出来るというわけでもないでしょう。ただ、ぼく達、研究者がこの病気とどうやって戦ってきて、今、何処まで来たのか... そして、その研究者の一人として、あくまで個人として「意識的にやっていること」について、今日は少しばかり触れたいと思います。
 
それから.. こういう生命科学系の解説記事から、「自分もなにか出来ないかな?知らないままでいいのかな?」と、研究・医療・製薬の業界に興味を持つ人が増えてくれたら良いな、と思います。では後編いくー

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<目次>

前回までのまとめ

 
認知症、それは想像よりも恐ろしい病気だったはずです。ボケ、痴呆症とは違うんです。 物の紐付けが混線して、実際の世界と自分の世界がめちゃくちゃに乖離しまてしまうんです。何が何だか分からない、じゃないんです。当たり前の日常なんです。
 
「うわっ、ゴキブリでた!殺せ―」

それはゴキブリじゃない他の何かかもしれません
それは最後まで、分からないことかもしれませんが。
 
そんな認知症の原因: 脳内の集積性ゴミたちアミロイドβ」と「タウ」の研究の歴史.. どんな問題を苦悩から、それをどう解決してきたのか.. 今現在もアルツハイマー認知症の治療法はないです。でも、その研究者たちの一世紀を越える歩みは「ひょっとして治療法を見つけるんじゃないか?」そんな期待を十分抱かせてくれます。そう思ってくれたら、同研究業界で働く一人として、とても嬉しいんですけど。
 
前回記事のリンクはこちら!
 

同研究業界で共有されている重大リスク

 
さて、前回は、"アルツハイマー認知症の研究状況:なぜ?の基礎理論"をご紹介しましたが、今回は打って変わって、「じゃあ、現実的にぼく達に何ができるのか?」というお話です。
 
何度も言いますが、アルツハイマー認知症の治療法はありません。もし治療法、と謳っている記事があれば、それは詐欺か、緩和治療でしょう
 
*緩和治療とは、症状を和らげる治療法であり、根本的な病気の問題点(病状)は確実に広がっている状況です。末期癌などでは緩和治療にシフトします。癌は根本的に残っていて少しずつ体を蝕んでいき、それを止めることはできないけれど、なるたけ普段どおりに生活できるように努力する治療法です。最大余命は変わりませんけれど、クオリティオブライフを尊重した過ごし方の一つです。
 
なぜアルツハイマー認知症になるのかさえ完全解明されていない状況で「どうしたら治せるのか?」「予防はどうすればいいのか?」それに答えることは絶対できません。。だからこの記事では、別の研究アプローチとして「アルツハイマー認知症リスク因子は何か」という研究分野について簡単に解説します。つまり、
 
じゃあ、そのリスク因子を避ければいいんじゃね?
というか、今の、最先端の原理理解からそこが限界
 
ってお話です。
 
先に一言
 
アルツハイマー認知症の研究業界、
「これは絶対間違いない」というリスク因子が既に3つあります
 
*勿論これは、ぼく達、研究者が発見できていない何百というリスク因子の中の一部でしょう。ただまあ、現時点で「それっぽい」ということは、その何百のリスク因子の中でも分かりやすいもの・見付けやすいもの⇒つまり特段ヤベーやつってことなんでしょう。この3つ、あなたは何個知ってますか?
 
過去、これまでにぼく達、研究者は星の数ほどの「アルツハイマー認知症の患者」と向き合ってきました。中には、今後の研究発展のために、さまざな形で協力を受け入れてくれた人がいるのです。
 
例えば、遺伝子検査
アルツハイマー認知症の患者たち、と無作為に集めた健康な人たちの全遺伝子を比較して、この遺伝子Xで異常が多いという症例を何万と集めてきました
 
例えば、血液検査
アルツハイマー認知症の患者たち、の体の状態を詳細に検査して、どういう状態であるとこの病気の発症確率・進行率が高いのか、長い日数、経過観察してきました
 
これから示すことは、そういった患者さんの善意の協力から見付けてきたんです。ありがとうございました。非常に心苦しいですが、ぼく達、子供達の未来のためにもう少しだけ、待って下さい。きっといつか治せるようにしますから。
 

アルツハイマー病の重大リスク①:生理的な身体特徴

 
これはぼく達にはどうしようもない話です。ですが、知っておいてほしいんです。避けられないアルツハイマー認知症の身体リスクは2つあります。
 
①女性であること
②加齢
 
 
①「女性であること」はショッキングなお話ですが、"アルツハイマー型"の認知症については女性の方が、男性よりも発症リスクが高いんです。2倍弱、というのが実測的な統計結果です。
 
*注意:男性は、もう一つの認知症タイプ"レビー小体型"の認知症に、同じく2倍弱、なりやすいです。あくまでも確率論の話ですが。
 
勿論、生物学的に、男性と女性は全然違います。女性が"アルツハイマー型の認知症"になりやすいということは対策の一つの方策にもなり得るんです。「なぜ、女性が?」その問の答えは、アルツハイマー認知症の治療法を作り出すのにとても役立つはずです。
また女性自身は「なにかちょっとおかしいかも?認知症..なんてことないよね?」そんな違和感/不安をもった時 .... まずは病院に行くのが良いですが、その間に .... アルツハイマー型のタイプから少し調べてみると良いかもしれません。主要な3つの認知症タイプ:"アルツハイマー"、"レビー小体型"、"脳血管型"では、症状が違いますから。
 
 
②「加齢」は、そんなに意外なことではないでしょう。発症年齢で言えば、アルツハイマー病は若年性タイプでさえ、40、50歳くらいが早期発症といわれる世界です。殆どの場合は60歳以降に発病します。この病気は完全に"加齢性疾患"です。若いから油断していい、というお話ではありませんが、特段、普段から気に掛けてほしい年齢層は、やはり60歳前後からです。
 
身体的な特徴や変化は、ぼく達にはどうすることもできません。ただ、知っておけば、ふとした気付きがあるかもしれないです。どんな病気も早期発見できなければ手遅れになり得ます。そんな想いで、この重大リスクからお話させてもらいました。
 

アルツハイマー病の重大リスク②:糖尿病

 
知ってましたか?
糖尿病がどうして怖い病気なのか。。
 
それは物凄く多種類の他疾患のリスクになるからです。ちなみに今、世界を流行中の新型コロナウイルスでも、死亡リスクが2倍以上高いです。アルツハイマー病と糖尿病の結びつきについては、とても沢山の論文で「これが原因!」「こっちも原因!」「まだまだ発見!」とてんやわんやした状態です。
 
なぜ糖尿病が、というお話はいつか別の機会で簡単サイエンス解説したいと思うので、ここでは本当にざっくりとした説明をします。
*記事作成したらここにリンク貼る!
 
糖尿病は、血中の"糖"が処理できず、ながく滞留する病気です。血液は酸素や栄養を全身くまなく運搬してますよね?血中に大量の糖があると、血管がダメージを受けます。だから全身、体の全組織でダメージを受けるんです。
 
プラスで。
 
」自体も「インスリン欠乏」自体も、別途で、全く違う理由からも、アルツハイマー病を進行させます「血管ダメージ」「糖」「インスリン欠乏」全部が違った側面からアルツハイマー病を引き起こしに行くんです。
 
それとこの話で"はっ"とした人は「糖尿病が血管ダメージなら、脳血管型の認知症のリスクにもなるのでは?」なんて考えを持つかもしれませんね。大正解です。ヤベー病気ですよ、糖尿病は。脳は細い血管が多いので、血管系のダメージはすぐに反映されます。
 
たぶん、アルツハイマー認知症の研究者で「糖尿病はリスクになるか?」に「NO」と答える人は居ないんじゃないですかね..ってくらい2021年現時点では明確なんです。ぼくが、一人のアルツハイマー認知症研究者として、何をしているか、見えてきたんじゃないですか?
 

アルツハイマー病の重代リスク③:APOE(ε4)

 
これはシンプルに遺伝子の名前です。つまり仕事を持った一つのタンパク質です。
 
*ぼくの記事を定期的に読んでいる人には基礎知識があるかと思いますが、補足しておくと、遺伝子は「タンパク質の設計図」です。タンパク質は「体のなかで、ナニか重要な仕事を任されたサラリーマン」です。上記の糖尿病の例で言えば、「インスリン」が血糖値を下げるのに必須だと聞いたことがある人も多いでしょう。「インスリン」はタンパク質です。彼らは血中で「糖を処理するように、とメッセージを肝臓や筋肉に送る」仕事をしています。
 
だからこの「APOE(ε4)」が体の中でどんな仕事をしているのか、それがどうアルツハイマー認知症に関わるのか解明されれば、ぐっと治療薬/予防薬の創出が進むことでしょう。現時点でこれは完全解明されていません。「これじゃないか?」「いや、こっちの理由がメインじゃない?」と議論の最中です。
 
例えば、APOEが
・直接、脳内のゴミ塊"アミロイドβ"とくっついてその凝集プロセスを変えてしまう
・血管に作用して、脳内のゴミを血管排出するプロセスを変えてしまう
・脳内の掃除屋でもあるグリア細胞たちの活性化プロセスを変えてしまう
 
etc..
 
「なぜAPOEタンパク質が"ε4型"という設計図を持つ人が、明らかに他の人よりアルツハイマー認知症になりやすいのか?」その疑念解消と、そのリスク回避による治療法/予防法の実用化にはもう少し時間がかかりそうです。
 
でも今、遺伝子検査として、このAPOE遺伝子がε4型であるか、検査することは出来ます。たぶんまだ保険適応外で2万円くらいしますが、この遺伝子診断結果がアルツハイマー認知症の処方薬を判断するテーラードメイド医療の基盤になる、なんて未来も近いのかも知れません。
 
 

個人として、ぼくがやっていること 

 
ずばり、「運動」です。
 
きちんと理由の一つをお話すると、今回ご紹介したアルツハイマー認知症の3大リスクの1つ「糖尿病」.. 皆さん、予防しようとしたら”食事制限”しませんか?一番必要なのは「運動」です。なぜって、血中の糖は"筋肉"で吸収されるからです。筋肉量が多いと、血糖は迅速に処理できます。
 
それから医科生化学の研究をやってるといつも思うのですが、運動:exerciseは、下手なお薬より効果あるように見えます。アルツハイマー認知症に限らず、です
 
あくまで個人的なぼんやりとした考えですが「ヒトは野生動物から進化してきた」ものです。野生動物にとって体は根本的な資本で、運動は必須です。「ヒトという集団の中で、運動できない個体が出てきた時、自然界では"その個体が排除された方が"ヒト集団の存続では有利」だったはずなんです。
 
"運動できない個体が病気になりやすいヒト集団"と"運動できようができまいが個体は等しい確率で病気になるヒト集団"があったら、前者のほうが自然界では絶対的に生き残りやすかったはずです。そうやって淘汰を繰り返して、常に自然界で存続しやすい特性(遺伝子構造)を持つものが今、ここに辿り着いたわけです。
 
だから、ぼくは遺伝子生物学ではなく、ダーウィン進化論の観点から「運動」の信者です。もちろん、長寿と運動は遺伝学的にも山ほど論文がありますし、老化研究業界の研究者に
 
「運動したほうが長生きできるかな?YESかNOだけで答えて」
 
と聞けば世界中で、殆どの研究者からYESと解答が出ると思います。アルツハイマー認知症でも、運動、だけで予防効果を得られるという論文とエヴィデンスは沢山あります。
 
ぼくは思うんですよね。
ちょっと過激なことを言いますね
 
タバコを吸うのが、積極的でない自殺」なら「動しないのは、積極的でない生存放棄」だって。もちろん、極論ですがーー健康に長生きしたいなら「食生活」と「運動」は絶対に避けられません。こんなこと当たり前で皆分かってるのに中々できません。
 
だから「運動」について2つ、アドバイスがあります。
だってぼくも最近まで、そこまで理解した上でも
「運動」できなかった一人ですから。
 
 
①「運動」について調べてみる
 
健康維持の運動って、たぶんぼくらのイメージよりずっと簡単で短い時間で簡単です。あなたが若いならランニングは辞めて下さい。1時間のランニングで得られる効果は、適切な筋トレで15分以内に得られます.. と、広く言われています。ぼくは複数の専門家にアドバイスもらっているだけなのですが、WebやYoutubeで調べると、たしかにそういう話はよく出ます
 
え?待って?
 
15分の適切な筋トレで、1時間分のランニング効果が得られるなら.. もう15分筋トレすれば終わりで良くない??⇒そうですww
 
適切なフォーム、適切な時間配分を筋トレを
1日15-30分(適切にやると1/3くらいは休憩)、週3回、
 
できそうじゃないですか?
想定よりずっと簡単じゃないですか?
 
上みたいなものをするためのYoutube動画だってありますから、それに合わせて終わりです。。教材は何か良いのあったら(後で聞いて)貼っておきますが、とりあえず、自分で調べてみましょう。ぼくらは検索慣れしてるんで、すぐですよ!
 
 
②ジムに通う
 
上で教材紹介されてない理由がこれです。ぼく、ラボの同僚に「トレーニングのコーチ免許」持ってる友達が2人、ラボ無関係の友達に1人いて、いつもジムで一緒にやってるのでぼく自身はあまり運動には詳しくないんです。
 
ただ「健康のための運動」は適切にやれば15分とかでOK。筋トレを目指すにしても、1時間(半分は休憩でだべってる)でOK。そういう話だけ知ってるんです。
 
ぼくみたいに「家じゃ勉強できずにカフェとか図書館行っていた」あなたは多分「筋トレもジム行かないとできない」のかも。家はそういうことする場所じゃないからーー違いますか?ぼくはそんな感じです、
 
もう諦めてジム行きましょ!
 
気楽でいいんです、ちょっとやって、シャワー浴びて帰れば。
音楽聴きながら、ちょっと動いて、さっぱりしましょ。
 
筋トレはもう科学/生物学の時代です。
だいたいのトレーニングマシーンは適切なフォーム、効率的なフォームになるように設計されてますので、ある程度は適当でも大丈夫です。。たぶん、こんなこと記事で書いたと言うとぼくの"筋トレメイト"達がぷちキレるんで、そのうち、筋トレの記事も書きますね
 

まとめ

 
どうだったでしょうか。
 
最後の方は、アルツハイマー認知症と少し無関係にも見えますが、重要なことなのでもう一度お伝えします。
 
運動を調べましょう。
運動をしましょう。
 
適切な方法の運動であれば、週3回30分で十分だと気付くはずです。30分の内、半分くらいは休憩にする必要があり、全体を通して、ちょっと音楽を聞く時間になってます。友達や家族とやればだべって終わりです。
 
過激なことでも言います
ぼくは生物学者として思うんです
 
運動しないのは、緩やかな自殺です
 
もしぼくが何処かの機関に拉致誘拐されて「1年以内に✗✗の疾患に効果的な治療法を見つけろ」「見つからなければ、キミを殺す」と脅迫されたら、✗✗がなんであれ、ぼくの研究計画はきっと"運動"でしょう。専攻分野なんて全部捨てて"運動"でしょう。次点で、"絶食"か"水素水"でしょうね。
 
健康に必要なことは"運動"です。
食事も凄く大事です、でも運動には勝てません。
 
実際、食事制限は"最大寿命"を延長しないことは10年くらい前から結構有名です。。あ、もちろん健康的に過ごすのに重要ですよ?毎食、次郎ラーメン食ってたら運動しててもたぶん死にます。
 
そんなことは良いんです
メンヘラのように言います
 
健康に必要なことは"運動"です
運動してください
 
健康に必要なことは"運動"です
運動してください
 
健康に必要なことは"運動"です
運動してください
 
 
ではではー